工事の発注者は、現場の規模に関係なく建設業者の技術力や誠実さなどを信頼して依頼します。そのため、工事を請け負った会社は、能力を最大限に発揮してその要望に応える責任があります。
そこで建設業法では、以下のような法律が定められています。
第26条の3(主任技術者及び監理技術者の職務等) |
---|
主任技術者及び管理技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。 |
この条件を確実に満たすために、建設業では多くの国家資格が用意されています。その中で、最も需要が高い資格は「施工管理技士」と呼ばれるものです。
施工管理技士とは、日本の建設業において特定業種の技術を認定した者に与えられる免許です。その区分は1級と2級があり、大規模な工事を請け負う際に必要になります。
また、この資格があれば、建設業の許可を受ける際に求められる「専任の技術者」になることができます。つまり、建設業の許可を取得するときは有利に働きます。
さらに、施工管理技士を取得することで、会社から重要な仕事を任せてもらえるようになるため、昇進や昇給、就職、転職などに有利になります。そのため、建設業に関わる人であれば、誰しもが施工管理技士の免許を欲しがります。
ただ、施工管理技士は国から発注される大規模な工事を請け負うために必要な国家資格なため、受講すればだれでも受かるものではありません。きちんと勉強して試験に挑まなければ、合格は厳しいです。
試験は「学科試験」と「実地試験」にわかれ、両方とも年に一度しか行われません。ここで落ちてしまうと、次のチャンスは一年後になってしまいます。
どちらか一方が合格した場合、学科あるいは実地試験が免除されます。
ただし、有効期間が設定されているため、その間にもう片方の試験を合格する必要があります。期限が切れてしまった場合、再び学科試験と実地試験の両方を受験しなければいけません。
施工管理技士を取得すれば仕事の幅が一気に広がるため、真剣に取り組むことをお勧めします。
資格の目的
建設業の目的は、以下のように定められています。
第一章:総則(目的)第一条 |
---|
建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。 |
この目的を達成するための一環として、施工管理技士という国家資格が生まれました。国土交通大臣が建設工事に従事する者を対象にして技術検定を行い、施工技術の向上を図ります。
ただし、自らが施工を行う職人の技術を認定するのではありません。設計から実際の施工に至るまでの一連を管理監督する技術者が、施工管理技士の対象です。
ただ、現場経験がなければ工事の内容をきちんと理解することは難しいです。そのため、受験資格の中に、実務経験が求められています。また、実務経験を誤魔化すことができないように、受験申請書には経験年数を記載する欄があり、人事権を持つ者(社長など)の印も必要とされています。
施工管理技士の種類
一つの国家資格を取得すれば、業種で専任の技術者として認められます。例えば、一級建築施工管理技士を取得した場合、16業種もの建設業で専任技術者になれます。
資格 |
専任技術者となれる建設業 |
---|---|
一級建築施工管理技士 |
建築工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工工事業、屋根工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、熱絶縁工事業、建具工事業 |
建築施工管理技士の他に、4種類の施工管理技士が存在します。
・土木施工管理技士
・造園施工管理技士
・管工事施工管理技士
・電気工事施工管理技士
それぞれ1・2級があり、施工管理技士を取得するだけで建設業の許可の要件の一つである、「専任の技術者」になることができます。
ただし、指定建設業(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業 )の特定建設業の許可を受ける場合、1級施工管理技士が必須です。
もしくは、国土交通大臣が国家資格者と同等、またはそれ以上の知識や技術、技能を持ち合わせていると認めた者以外は専任技術者になることはできないので注意してください。
また、施工管理技士を取得すると、専任の技術者になれるだけではありません。以下のようなメリットがあります。
施工管理技士を取得することによって得られるメリット
1級施工管理技士は、建設工事の現場に配置される「監理技術者」または「主任技術者」になれます。
特に、指定建設業の特定建設業の場合、「専任の技術者」や「監理技術者」は、原則として1級施工管理技士などの国家資格者に限定されるため、重要な資格です。
一方、2級施工管理技士の場合、一般建設業の許可で定める専任の技術者及び、主任技術者になれます。
ちなみに、2級施工管理技士であっても、所定の指導監督的実務経験があれば、指定建設業以外の特定建設業の専任の技術者、または監理技術者になれます。
指導監督的実務経験とは、「元請けとして工事を請け負い、その請負金額が4,500万円以上である現場について2年以上の指導経験を有する者」が専任技術者として認められます。指導監督的実務経験とは、建設工事の設計や施工、工事現場主任、現場監督などのことを指します。
特定の建設業の許可の取得を目指していない会社の場合、「1級の施工管理技士は必要ないのでは?」と考えます。ただ、施工管理技士の資格は、主任または監理技術者になれるだけではありません。
例えば、国から公共工事を請け負う際に行われる「入札」では、他の会社よりも優位に立つことができます。
入札とは、請負工事などを受注する際、一つの工事に対して複数の業者が工事請負に関する見積もり価格を発注者へ提示し合うことを指します。工事金額や入札に参加した会社の実績や信頼などを比べたのち、発注者がどの建設業者に工事を依頼するかを決める形式です。
各自治体が発注する公共施設の建設や、公用設備などを含めた公共工事では、この入札制度が採用されています。そのため、公共事業を請け負うためには、入札に参加し、落札する必要があります。
なぜこのような仕組みを導入しているかというと、大規模な公共工事に参入したい業者はもちろんのこと、営業などに「時間」や「人件費」をさけない会社でも、工事を新規に受注できるようにするためです。
ただし、誰でも簡単に入札できるわけではありません。公共工事を発注者から直接請け負うため、建設業者が必ず受けなければならない審査があります。これを「経営事項審査」と呼びます。
この審査は、「経営状況」や「経営規模」、「技術力」、「その他の審査項目(社会性など)」について数値化して評価します。
このとき、施工管理技士を所有していれば、会社の評価が上がります。この国家資格を保有していれば、経営事項審査の技術力の評価において、1級は「5点」、2級であれば「2点」が配点されます。
なお、1級施工管理技士の資格を持っていて、監理技術者資格者証を保有し、かつ監理技術者講習を受講した場合は「6点」が加算されます。
つまり、「施工管理技士の資格を取得することで、所属建設会社の技術力の評点を上げることができる」ということです。その結果、総合評定値を高めることに繋がります。
このページで述べてきたように、施工管理技士を取得することで、就職や転職に有利になるのはもちろんのこと、仕事の幅が一気に広がります。また、この国家資格を取得する際、多くの専門知識を得ることができることも大きな魅力です。
あなたが務めている建設業の業種に合わせた施工管理技士に合格して、大規模な工事を管理できるスペシャリストを目指してください。