家庭菜園を行っている、あるいは始めたいと思っている大半の方は「無農薬の野菜を食べたい」と考えています。自分で作る食物であれば作る過程が分かるため、安心して料理に使用することができるからです。
ただ、無農薬で家庭菜園を行う場合、病害虫の被害にあいやすくなります。
植物の病害であれば、肥料や有機物を活用して、微生物や菌で防除することができます。一方、害虫の場合、屋外にある以上は、24時間見張っているわけにはいかないため、虫がついてしまうのは仕方のないことです。
そこで、バンカープランツを設けることで、野菜をアブラムシなどの昆虫から守ることができます。
バンカープランツとは、作物に害を与える虫を捕食する「天敵となる生物」をもっている植物のことを指します。あえて害虫の天敵がつきやすい植栽を植えることで、野菜に悪影響を及ぼす害虫を駆除してもらうことを目的とします。
そのことから、「おとり作物」や「天敵温存作物」とも呼ばれています。要するに、バンカープランツは作物のガードマン的存在です。
バンカープランツを植えると、無農薬野菜を作ることができる
バンカープランツという名前の由来は、銀行家(バンカー)からきているといわれています。人工的に放した天敵をバンカープランツとなる植物(銀行)に預けておき、「必要となったときに害虫を駆除してもらう」ことを目的としているからです。
自然の中で育つ野菜の場合、さまざまな種類の植物に囲まれています。そのため、一つの作物に悪影響を及ぼす害虫が大量発生することはほとんどありません。
しかし、家庭菜園の場合、単一の農作物のみを生産しがちです。その結果、栽培されている作物を好き好んで食べる虫が無数に繁殖してしまいます。その害虫の天敵となる生物がいない限り、野菜は病害虫の被害にあいやすくなってしまいます。
だからといって農薬を撒いてしまうと、無農薬野菜ではなくなってしまうため、安心して食べることができなくなります。
そこで活躍するのが、バンカープランツです。野菜についた昆虫の天敵の住処となる植物を植えることで、無農薬にて害虫駆除を実現できます。
バンカープランツの植え方
バンカープランツとして活躍する植物は、育てる野菜につきやすい害虫の天敵が集まるモノを選びます。
例えば、作物に悪影響を及ぼす害虫といえば、「アブラムシ」が代表的です。アブラムシは主に若い葉に群がり、寄生したり吸汁(きゅうじゅう:植物の水分を吸うこと)したりします。すると、野菜は黄変(おうへん:変色して黄ばむこと)したり萎縮(いしゅく:萎れること)したりします。
また、吸汁する際、野菜に排泄物を出すため、それが堆積されていきます。すると、「すす病」と呼ばれる病気にかかりやすくなります。
すす病とは、植物の葉や枝、幹などの表面が炭のような黒いすすで覆われてしまう現象を指します。葉っぱがすす病に侵されてしまうと美観が損なわれるだけでなく、光合成がしづらくなります。その結果、植物の生育に悪影響及ぼします。
そこで、「アブラムシの天敵」が好むライ麦やエンバクなどをバンカープランツとして植えると良いです。
バンカープランツの設け方は、「菜園の周りに植える方法」と「野菜を育てる予定地の畝(うね:細長く直線状に土を盛り上げた所のこと)の間に植栽する手法」の2種類があります。
菜園の周りに植える場合、一列だけではなく、2~3列ほど植えると良いです。天敵となる虫が繁殖しやすくなり、防風の役割も果たします。
一方、畝の間に植栽する場合、飛来するアブラムシが一時的にバンカープランツに乗り移るようにします。このとき、バンカープランツに住み着いている天敵がアブラムシを駆除してくれます。たとえ野菜にたどり着いたとしても、天敵となる生物に見つかれば食べられてしまうため、その効果を十分に発揮します。
ただ、野菜を植えるのと同時に、バンカープランツとなる植物が育っていなければ、害虫を捕食する虫は集まれません。できれば、畑が裸地状態(らちじょうたい:作物を育てていない状態)になる冬期にバンカープランツになる種を植えておき、ある程度育てておくと良いです。
また、バンカープランツとなる植物は育てる作物によって異なるため、下調べをした上で設けるようにしましょう。これを活用して、安心して食卓に出せる無農薬野菜を育ててください。