外構工事(エクステリア工事)を行い、庭に畑を設けると、あなたの家で家庭菜園を楽しめるようになります。家庭菜園では、育った野菜を食べるのはもちろんのこと、育てる楽しみも味わうことができるようになります。
ただ、野菜類を連作(れんさく)すると、「連作障害」と呼ばれる土壌病害が発生します。
連作とは、同じ場所に同種類の作物を栽培し続けることをいいます。連作を続けると、その野菜の健康を侵す病原菌や有害線虫(ネマトーダ)が多くなったり、土壌中の養分が不足したりしてしまいます。その結果、作物の出来栄えが悪くなります。これが、連作障害です。
連作障害を防ぐ一番の方法は、一つの野菜を同じ場所で栽培し続けないことです。
ただ、家庭菜園では何種類もの作物を作り続けるわけではないため、無意識に連作を行ってしまう方は多いです。
そのため、土壌環境を保つために必要な有益微生物が減少しがちです。有益微生物とは、土壌障害や病虫害の発生要素を排除し、野菜の生育環境を整えてくれる微生物のことです。
有益微生物が減ってしまうと、野菜に害をもたらす悪性の微生物の割合が増えたり害虫が発生しやすくなったりします。すると、微生物群のバランスが悪くなり、作物が病気にかかりやすくなってしまいます。
そこで、有機資材を活用して、有益微生物の繁殖を活性化させる方法を紹介します。これを行うことで、土壌環境が改善され、野菜が健康に育つ畑に生まれ変わります。
「病原菌を分解する微生物」を繁殖させる
多くの病原菌の細胞膜は、「キチン」と呼ばれる物質で作られています。そこで、キチンを分解する微生物を繁殖させる必要があります。
微生物は、「酸素が多い場所」や「有機物がたくさんある場所」を好むため、ここでは有機資材を活用して微生物を活発に繁殖させる方法をとります。
「キチンを分解する有益微生物」の動きを活性化させる有機資材は、カニ殻や廃菌床(はいきんしょう:キノコを培養した資材)などが選ばれます。
これらの有機資材には、キチンが豊富に含まれているため、「キチン質資材」と呼びます。キチン質の有機資材を分解することで繁殖する微生物は、同時に病原菌の細胞も溶かしてくれます。この有益微生物のことを、「放射菌」と呼びます。
これらは、ホームセンターなどに行けば肥料として販売しているため、簡単に手に入れることができます。
また、インターネットなどで廃菌床を無料で提供しているシイタケの農園もあるため、それを利用しても良いです。
使用方法は、10m2あたりの畑に対して、カニ殻や廃菌床を2~4kg散布して土壌へ丁寧に混ぜ合わせます。このとき、放射菌はこれら有機資材を分解するために「キチナーゼ」と呼ばれる酵素を産生します。このキチナーゼ酵素が、病原菌の細胞を構成しているキチンを溶かしてくれる正体です。
これにより、「萎ちょう病(いちょうびょう:野菜の衰えやしぼみを引き起こす糸状菌病)」や「半身萎ちょう病(天気の良い日中などに茎葉のしおれを引き起こす糸状菌病)」などの病害を防ぐことができます。
また、疫病(えきびょう:悪性の伝染病)や根腐病(ねぐされびょう:根や地下茎が、糸状菌の寄生などによって腐る病害)を防除する場合、カニ殻や廃菌床などの「キチン質資材」を「わら」などの「セルロース質資材」に変更すると良いです。
これらの病原菌を退治する原理は、ここで述べた内容と同じです。わらを分解するときの微生物が活躍して、野菜に悪影響を及ぼす菌も同時に分解してくれます。
なお、有機資材は病原菌を防除するだけではありません。例えば、土壌に炭を混ぜ合わせることで、有益微生物の住処になり、野菜を強く育てるための手助けをしてくれます。
野菜を強く育てる土壌作り
炭は多孔質(たこうしつ:細かい穴や孔の空いた構造をする性質)のため、吸着性と保水性に優れ、有機質肥料と共に使えば有用な微生物を増やすことができます。
通常よりも肥料の量を抑えても、木炭を土に混ぜることで生育良好になったという実験結果も出ています。
使用する炭は、ホームセンターや園芸センターに行けば土壌改良用の炭が販売されているので、それを使用すると良いです。
それを10m2あたりの畑に対して、4~15kgを土壌によく混ぜ合わせます。
すると、「菌根菌(きんこんきん)」と呼ばれる菌類が炭を住処にして活発に繁殖し始めます。この菌根菌は、「植物の根に侵入して形成する構造を持った共生体」です。野菜の根と共栄すると、微生物から鉄やリンなどのミネラルの供給を受けられるようになります。
また、菌根菌の刺激によって、野菜に抵抗性がつくため、病気にかかりにくい作物を作ることができます。
これに加え、施肥(せひ:肥料を与えること)を施せば、野菜は健康かつ大きく育ちます。
このページで述べてきた通り、微生物や菌は植物に多大な影響を与えます。有益微生物の能力を活用して、おいしい野菜作りに励んでください。