和庭といえば、日本が古くから誇る純和風住宅にマッチしたお庭といえます。和庭の特徴は「見て楽しむ庭」です。
ただ、右の写真のように飛び石(歩行のために置かれる石)を設けていると、飛び石伝いに歩くようになります。飛び石以外に足を踏み入れる場所がなくなるため、人が立ち入れる場所は限られています。実用性よりも、見栄え重視の外構(エクステリア)といえます。
しかし、それが和庭の良さであり、外観の味になります。和庭は非常に贅沢な外構であり、今でも人気が絶えることはありません。
和庭はまさに「おもてなしの空間」であり、訪れた人を楽しませることができる上に、自然に囲まれることで癒しを与えることができます。
ただ、和庭の多くは自然石や植栽を使用したものが用いられる代わりに、コンクリートやブロックといった人工的構造物が用いられることはほとんどありません。
例えば、温かみのある和庭に打ち放しコンクリート(枠を外した直後のむき出しのままの状態のコンクリート)を設けてしまうと、違和感を覚えてしまいます。
和の特徴である温かみを持たない人工的構造物を設けてしまうと、風情ある外観を乱してしまいます。
しかし、人工的構造物であっても、上手に活用すれば和庭にマッチした外観を生み出すことが可能です。例を以下にまとめました。
コンクリートに模様を付ける
まず、コンクリートを和庭に用いる場所は、駐車場や玄関アプローチ(敷地の入り口から玄関までの路)に用いることをお勧めします。
なぜなら、頻繁に人が歩いたり重量のある車が乗り上げたりする場所は耐久性が必要だからです。
砂利を敷いたり石を並べたりするだけでは、長い年月が経つと手入れに費用がかかるばかりでなく、崩れたり動いたりしてしまいます。
そこで、頻繁に乗り上げる場所を耐久性に優れたコンクリートにすることで、いつまでも壊れない見栄えのある外構を作り上げることが可能になります。
写真は、きれいな石畳(自然石を使った路面の舗装)のように見えるかもしれませんが、実は一枚のコンクリートで作られています。コンクリートが硬化する前は生コン(生コンクリート)と呼ばれる液状で現場に運ばれてきます。生コンは液状なので、職人さんの手でさまざまな姿形に施工することが可能です。
コンクリートを仕上げる際、モルタル(ペースト状のコンクリート)を表面に浮き上がらせ、それをコテと呼ばれる道具で撫で上げればツルツルに仕上げることができます。
その後、浮き上がらせたモルタルに石やつなぎ目の模様がある型をコンクリートの表面に着けます。すると、「石の質感」を表現することができます。
モルタルを溶かしたチョコレートに置き換えて考えると分かりやすいです。チョコレートを型に流し込むことで、変幻自在に姿かたちを変えることができます。同じく、モルタルも型を押し付けることでさまざまな模様をつけることができます。
スタンプを行わないコンクリートは、人工的で自然とかけ離れた印象を与えてしまうのですが、ひと手間加えることで違和感なく周りの外構にマッチします。さらに、仕上げたその日から長い年月を経たような素朴な趣や深い味わいのある外観を楽しめる上に、雑草が生えてくる心配もありません。
自然石とコンクリートを使い分ける
自然石を使った外構では、雑草の手入れや石がずれてしまったときのメンテナンス費用が毎年必要になるというデメリットが発生してしまいます。
しかし、実際に自然石を並べる石畳も素晴らしく見栄えのある外構です。本物の石を使用するので、質感や絶妙な色合いを楽しむことができます。さらに、コンクリートにはどうやっても出せない味を演出できるメリットがあります。
一方、コンクリートを用いることでメンテナンス費用という概念がなくなります。前述の通り、耐久性に優れているので10年、20年は壊れる心配がいりません。さらに、限りなく本物の石に近い質感を表現することができます。
ただ、本物の石と比べてしまうとコンクリートの方が見劣りしてしまうのは仕方がありません。
そこで、自然石とコンクリートを使い分けることで両者のデメリットを補うことができます。自然石とコンクリートを上手に使い分けて、いつまでも見栄えるある和庭を作り上げてください。