ご家族の中に体の不自由な方やお年寄りがいる場合、外構をバリアフリーにする方は多いです。
バリアフリーを意識した外構工事(エクステリア工事)を行う際、最初に考えるのは階段ではなく、スロープを設けることです。
室内だけでなく、玄関に入る路がスロープになっていれば、車椅子をご利用の方でも手軽に出入りできるからです。
ただ、家族全員が車椅子を利用するわけではないため、階段とスロープの両方を設置するパターンが主流です。
しかし、単にスロープを設ければ「車椅子の走行」や「歩行が不自由な方の通行」が快適になるわけではありません。また、使用する素材にも気をつけなければ、せっかくスロープを設けても雨の日に転びやすくなります。ただでさえ歩きづらい坂道が、滑りやすくては本末転倒です。
専門的な話になりますが、スロープは車椅子の通行、または歩行しやすい傾斜角度にする必要があります。そのため、スロープを設ける際に確保したい幅についても知らなければいけません。そこで、傾斜角度やスロープの幅、さらには素材の選び方について詳しく述べていきます。
この内容を知らずにスロープを設けてしまうと、事故につながりやすいエクステリアになりかねません。
スロープの傾斜角度の基準
外構工事(エクステリア工事)でスロープを設ける際は、以下の傾斜角度の基準をもとに設計しなければ危険を伴います。
・屋外の場合、5%以下(1m進んで、高低差が5cm以下の傾斜)
・屋内の場合、8%以下(1m進んで、高低差が8cm以下の傾斜)
実は、屋外と屋内では傾斜角度の基準が異なります。屋外の方が傾斜は緩やかに設定されています。これは、「屋内よりも危険がある」と考えられるからです。ただし、高低差が50cm以下の場合、「多少角度が急になっても良い」という緩和基準が用意されています。
なお、高低差が大きくて傾斜角度の基準を満たせない場合、スロープを折り返すなどの処置を取ります。
また、5%の角度では、スロープが長くなり過ぎてしまうことがあります。そうなると、実際に設置するのが困難になります。
その場合、傾斜角度を8%基準にし、途中で水平部(踊り場)を設けることで対応を考えてください。
ここまでの内容を理解すると、エクステリアのバリアフリー化を我流で行うのは危険であることが分かります。
きちんと計算して傾斜角度を確保できるのであれば問題ありませんが、スロープだけは専門家に依頼した方が無難です。ご自身で作り上げた外構で、家族が怪我をしてはやり切れません。専門家と一緒にチェックしながら、安全を第一にプランニングするようにしましょう。
スロープの幅について
傾斜角度の次に気をつけなければいけない点は、スロープの幅です。屋外の場合、130cm以上は確保したいところです。しかし、これだけの幅を設けてしまうと、かなりのスペースをスロープに使用することになります。実際、1m30cm以上もの広さを確保することが困難なお宅は多いです。
そこで、一般のご家庭では「1m以上の幅があれば良い」と覚えておいてください。また、スロープの両サイドには手すりを設けるのはもちろんのこと、車椅子の脱輪を防ぐために縁石(えんせき)を設けることも忘れてはいけません。
スロープを設置してあるご家庭を見てみると、縁石を設置していないお宅がたくさんあることに気付きます。脱輪をして怪我をされてからでは遅いので、縁石は必須です。
スロープの床素材について
傾斜角度の基準を満たしてスロープの幅を確保できたら、最後は床素材を考えなければいけません。屋外用の舗装材には、アスファルトやコンクリート、石材、レンガ、タイル、インターロッキング(ブロックを互い違いに並べること)などがあります。
ただ、石材やタイルは雨が降ると滑りやすくなるものが多いので、スロープにはお勧めできません。デザイン性は豊かなので取り入れたいところですが、危険を冒してまで見た目にこだわる必要はありません。
ただし、近年では滑りにくい素材の床素材が多数販売されています。中には、滑りにくい石材やタイルも開発されているので、工事を依頼する業者に尋ねてみれば紹介してくれます。
また、コンクリートであっても、表面をツルツルに仕上げてしまうと転倒しやすいです。そのため、スロープをコンクリートで仕上げる場合は、「刷毛引き(はけびき:ほうきなどの跡をつけてしあげること)」を採用すると良いです。ほうきの跡が滑り止めになるので、雨の日でも滑って転ぶ心配はなくなります。
エクステリアにバリアフリーを取り入れる際は、傾斜角度や幅、素材に至るまでこだわらなければ余計に危険が増すだけです。大切なご家族が怪我をしないためにも、細部に至るまで考えて、実際に使用したときのことを想像してプランニングするようにしましょう。