外構工事(エクステリア工事)では、駐車場やアプローチ、あるいは建物を囲う塀など、さまざまな場所でコンクリートが使用されています。コンクリートの特徴が、「高強度」で「耐久性に優れている」からです。たとえ重い車が乗る駐車場であっても、地面をコンクリートで固めておけば数十年先も同じ外観を保つことができます。
ただし、コンクリートは現場へ運ばれてくる時点では固まっていないため、適切に取り扱わなければ品質を損ねてしまいます。まだ固まっていない状態のコンクリートを「生コンクリート(以下、生コン)」と呼びます。
生コンは、コンクリート工場のコンピューターで水やセメント、砂、砂利などの比率を正確に計算して混ぜ合わせてあるため、現場で手を加えることはできません。
しかし、固い生コンだと作業効率が落ちてしまうため、加水(水を加えること)して生コンを柔らかくしている業者はたくさんいます。生コンへ加水をしてしまうと、コンクリートの強度を決める「水セメント比(水とセメンとの比率)」が変わってしまうので、設計通りの強度を出すことができなくなります。
とはいっても、生コンが固すぎると型枠(コンクリートを流し込む型)に入っていかないため、コンクリートが型枠全体に行き渡らずに空隙が発生するなど、打設不良(だせつふりょう:コンクリートを流し込む作業を打設と呼び、その不良のこと)を引き起こす可能性が出てきます。
特に、近年では耐震性が求められているため、一昔前に比べて生コンの強度は上がっています。ただ、生コンの強度が増すと、粘性も増してしまうため、コンクリートは必然的に固く(粘っこく)なります。その結果、作業効率が悪くなります。
そこで、現場で「流動化剤(りゅうどうかざい)」と呼ばれる薬品を生コンに投入することで、品質を落とさずにコンクリートを柔らかくすることがあります。これを使用することで、高強度の生コンを設計通り打設することができます。
流動化剤について
流動化剤は、大きく分けて「液体の流動化剤」と「粉末の流動化剤」の2種類が存在します。ただ、液体の流動化剤の場合、生コンの品質を守るために、流動化剤専門投入技術者が必要になります。用法用量を守って使用しなければ、コンクリートの強度が著しく低下してしまうからです。
一方、粉末の流動化剤の場合、生コン1m3(りゅうべい)に対して一袋投入すれば良いだけなので、投入専門技術者がいなくても、建築・土木の技術者なら誰でも使用できます。
現場では、右の写真の「レオパック」と呼ばれる粉末状の流動化剤が使用されています。
レオパックは、生コンに含まれるアルカリ分で解砕(かいさい:塊を解きほぐすこと)される紙でパックされてあるため、使用量を測る必要がありません。
レオパックは、スランプロス(生コンが固くなること)の原因であるセメント粒子の凝集(ぎょうしゅう:粒子が集まってより大きな粒子になること)を一時的(一時間前後)に抑制する働きがあります。
さらに、JIS(日本工業規格)に適合しているため、生コンの品質を損ねることがありません。誰が投入しても生コンの強度は変わらないので、現在では多くの現場で使用されています。
ただし、生コンは、工場を出荷してから90分しか品質が保証されていません。そのため、現場に到着してからすぐに打設を完了させる必要があります。90分を過ぎてしまうと、生コンは硬化が始まり、次第に固くなって使用できなくなります。
そこで、エクステリア工事でコンクリートを使用する場合は、生コンの出荷伝票を見せてもらうことをお勧めします。出荷伝票には、出荷時間が記載されているため、経過時間を一目で確認できます。外構工事で不正をされないために、とても大切なことなので、面倒くさがらずに必ず確認しましょう。
流動化剤の使用方法
レオパックの使用方法は、生コン車の「ホッパー」と呼ばれる上の開口部からなるべく奥に投入して混ぜ合わせます。
前述の通り、生コン1m3(りゅうべい)に対して一袋投入すれば良いだけなので、2m3なら2つ、4m3なら4つといったようにレオパックを投入します。
このとき、規定で2分間の高速攪拌(かくはん)が定められているため、時計を見ながらよく混ぜます。
ただ、「レオパックを入れればよい」と思っている職人さんが多いため、30秒ほどカクハンしてそのまま打設を開始してしまう外構専門業者(エクステリア業者)がいるのは事実です。
実際に、私が職人だった頃、流動化剤を投入した後にろくに攪拌しないで生コン打設を開始してしまう業者をこの目でたくさん見てきました。しかし、きちんと混ぜ合わせなければ、品質が偏ってしまうため、仕上がりに影響が出てくる可能性があります。
もし、エクステリア工事で生コンを使用することがある場合、できる限り立ち会うようにしましょう。現場にお施主さん(工事依頼主)がいることで、職人さんたちに緊張感が生まれるため、きちんと工事を行おうとするからです。
なお、レオパックを使用せずに加水をして生コンを柔らかくしている光景を見たら、すぐに工事をストップさせてください。冒頭で述べた通り、加水をしてしまうと水セメント比が変わってしまうため、設計通りの強度が出なくなるからです。
外構工事で手抜き工事をさせないためには、あなたも現場監督になり、できる限り職人さんたちと触れ合うように心がけましょう。