都心部では、コンクリートやアスファルトなどで地面が覆い隠されているため、緑地帯は多くありません。また、密接した空間に土地が密集しているため、植栽を植える十分なスペースを確保できません。
樹木の種類にもよりますが、葉を広げて大きくなる植物は、周り近所の迷惑になります。ガーデニングや家庭菜園程度であれば、庭を有効活用すれば楽しむことができます。しかし、シンボルツリーなどに適した背丈の大きい植栽になると、幅広いスペースが必要になります。
むやみやたらに植栽を植えてしまうと、伸びた葉や落ち葉、あるいは害虫などの問題が発生してしまいます。すると、周り近所からクレームが入り、トラブルの原因になりかねません。他人の目を気にすると、自然を楽しむはずの植栽を後ろめたい気持ちで育てなければいけなくなります。
このような場合でも、解決策があります。都心部にも適した植栽を適用することで、緑豊かな外構を楽しむことができます。
狭い庭に向く樹木
都心部の場合、スペースの有効活用を行わなければいけません。ウッドデッキやテラスといった、比較的大きなスペースを必要とする外構工事を優先してしまうと、残されたスペースが限られてしまいます。
玄関前や中庭など、わずかなスペースであっても、植栽を施すことによって風情豊かな空間になります。例えば、玄関前の小さなスペースにガーデニングを行うことで、建物の入り口に華やかな印象を持たせることができます。
ただし、植物を植えることができる場所は限られています。植栽が育つためには、日光や水、栄養を含んだ土、風などが必要になります。草木はもともと自然の中にあるものなので、十分に発育するために自然の力を借りなければいけません。要するに、どんな樹種でも植えることができるわけではないということです。
都心部で樹木選定の決め手となるものは、「あまり成長しないこと」と「剪定(せんてい:木の枝を切ること)しやすいこと」のいずれかの要素を持っていることが条件となります。
あまり成長しない植栽を選ぶ場合、ヤマボウシが人気であり、多くのお宅の外構に選ばれています。ただ、横に広がるため、剪定には不向きです。しかし、育つするスピードが遅いため、きちんと手入れを行えば都心部でも楽しめる植栽になります。
一方、剪定の手間を考慮する場合、竹が適しています。竹は成長が早いものの、伸びていく方向が真上の一定方向なので、剪定の手間を考える必要がありません。そのため、中庭の狭いスペースに設ける方はたくさんいます。
このほかにも、横に広がらない性ように改良された樹木は無数に存在します。こうした植栽を上手に活用して、狭いスペースも有効に利用しながら植栽を楽しんでください。
それぞれ異なる樹皮のテクスチェア
次に、樹皮のテクスチェア(表面の質感・手触りなどを示す概念)を取り入れて話を掘り下げていきます。
植栽デザインでは、葉や花などに関心が集まり、幹にはあまり注意が行き渡りません。しかし、幹肌によってツルツルな質感なものやザラザラな質感なもの、または赤や青の色が付いているものなど千差万別です。この樹皮のテクスチェアをうまく活用することで、植栽のデザインの幅が一気に広がります。
例えば、幹肌の模様には縦縞と横縞があります。この2種類の樹木を並べて植えるだけで、庭の印象にリズムを与えることができます。あるいは、艶やかな質感のサルスベリの場合、葉が落ちたあとに幹のみが残ります。
また、幹にトゲがある樹木を敷地境界に植えれば、防犯能力を持った生き垣になります。特に、不審者の侵入が懸念される都心部には有効な植栽になります。
このように、植栽の知識を付けていくことで選ぶべき植栽が見えてきます。あなたの望んでいる外構に近づけるために、さまざまな特性をもった植栽を庭に植えてみてはいかがでしょうか。